十数年前、自分が高校1年だったときの秋に、
今は軽井沢の編集社の社長をやっている友人Yと
学校帰りに乗り換えの関係で横川で途中下車。

秋だったので、山に行ったらクリとかキノコとかあるかなー、
ってんで、なんとなく子育地蔵のある山の方に歩いて行く。

子育地蔵を過ぎるとすぐ橋がありそこを渡ったところに、
道からちょっと逸れて林の中に続く道があり、(写真右側の道)

初めてでしたがその方向に2人で進んで行く。

ちょっと進んだ湿った場所に足跡が残っていたので、
「こんな山道でも人が来てるから、なんかあるかもね」
なんて話してました。

そこからちょうどケモノ道みたいのが山の斜面に延びていたので、
その道を登って行く。

ところどころ手をつく位の斜面。

自分が先に10m程登ったところで、
人の気配みたいなモノを感じて、ふと、斜面の上を見上げると
10m程先に作業着を着たような人が、
木々の間にこっちを向いて立っているのが見えました。

とっさに、入っちゃいけないところで、
怒られるのかな、と思いましたが、相手は無言。

眼が悪いので理解するのに時間がかかりましたが、
その人の顔が少し上を向いていて何かおかしい。

林の中とはいえあきらかに体が宙に浮き上がっている。

一瞬にして事態を理解し、後から登って来るYの方を振り向くと、
ちょうど自分のところに着くところで、
自分が立ち止まっているので不審に思ったらしく、
「どうしたん?」と言うので、
仏さんの方を手で指し示す。

Yがそっちを見たあとに、ゆっくりとこちらに向き直り、
「マジかよ?」
自分が小さくうなずいた後は2人で斜面を一目散に駆け下りる。

登る時は大変だったのがウソのような猛スピード。

自分の顔は蒼白だったらしい。
Yもそうでしたが。

子育地蔵も過ぎて川にそって走り降り、
上り口の食料品店に2人で駆け込みました。
後から考えると襲われるわけでもないので、
何も走って逃げるようにいくこともないんですが、
この時は気が動転。


こちらがかけこんだお店(現在は閉店?)

そこの親父さんに「この先で首吊りがっっっ!」と
息せき切って話すと、
”オヤジさん!もうちょっと興奮しろよー”と思いながらも
オヤジさんはのんびりと警察に連絡。

警察が来るまで待つこと20分。
親父さんがその間に瓶コーラをくれて、
コーラを飲みながら店頭で時間をつぶす。

「これってスタンドバイミーみたいだなー」
「警察に呼ばれてカツ丼食っちゃたりするのかな」
「あんなとこにいたの怪しまれるかな?」
「あの足跡は仏さんのだったんだ」
なんてやや興奮して話してるとパトカー到着。

「とりあえず現場まで案内してもらえる?」

また行くのやだなーと思いつつも好奇心がまさり、
警察と一緒に現場近くの足跡を見つけた辺りまで行き、
そこから斜面を見あげると仏さんが見える。

警察官「それじゃ生徒手帳みせてもらって、
ここに住所と名前と連絡先書いてくれる。
これで帰ってもらって大丈夫だから。」
と、さっぱりしたもの。

なんでこんなとこに来てたのかも聴かれず拍子抜け。
全くカツ丼どころではない。

そのまま2人帰るのも、変なはなし物足りない感じで、
警察官と鑑識の人が仏さんのところに行くのをぼんやり見てました。

「俺達も見に行くか?」
「顔とか見たら一生忘れられないだろ」
「寝つき悪いよな」
「でも気になる」
なんて話してましたが結局大人しく止めときました。

そんな話をしていると仏さんのところで、
夕暮れのなか写真撮影でストロボが光る。

パシャッ、パシャッという無機的な音。

紐でぶら下がった仏さんが手で押されて
グルッと向きを変える様子。

人間がモノのように扱われてるのがショック。

5分位は下から眺めてましたが、
終わる気配もないのでまた来た道を戻る。



軽井沢行きの電車も乗り過ごし、2時間こない。
なんだか腹が減ったので2人、
「麻苧(あさお)の滝 *横川特集 其の一*」
でも紹介したお店に飯を食いに行く。

このとき自分は異常な食欲で
ラーメンと丼モノを各大盛りでペロッと平らげる。
Yも不思議がる異様な食欲。なんだったんだろう。

その後家に帰ったのは9時位。
さすがにその晩は見つけたときと鑑識のときの情景が蘇って
寝つきが悪かった。


次の日は学校でやや自慢げに話してました。
先輩が訊きに来たりしてちょっとだけヒーロー気分。


上毛新聞って群馬のローカル新聞に
「通りすがりの高校生が首吊り発見」とベタ記事にでてて、
友人に切り抜きをもらって今もとってあります。
あんなところ誰も通りすがらないだろ!と、思いますが。

その翌日の新聞には身元がでてました。
埼玉県のパチンコ屋の店員で20代の人だったようです。
現場周辺にCD数枚と本が落ちていたそうです。
なんのCDと本だったのか気になる。


死後2日位。秋で涼しかったので腐敗してなかったのが幸い。

多少離れたところで気がついたのも良かったです、
そのまま地面を向いて進んでいたらぶつかっていたかと思うとゾッとする。

亡くなっていたとはいえ人の気配ってのはするもんで、
パッと気がついたのは不思議と言えば不思議。

オーバーかもしれませんが、ほとんど人が行くところではなく、
2人で山のほうに行ってみるか、なんてのもその時が始めてで、
後から考えるとなんだか呼ばれて導かれて行ったような気がします。

今でも似たような斜面を見上げると、
フッとこのときのことを思い出します。

何故、自殺したのかはいまだ知りません。
あの斜面を一人登って行き、縄をかけるときの心境を思うとやるせない。


その後、親戚のおじさんに話したら、
「オラ昔、山んなかでしょっちょう発見しただ」
なんて言われて全く驚かれず。



今回は全く個人的な体験談かつ長くてスイマセン。

横川といえばこの話。
自分としてはハズせないのです。